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株式会社ANALOG   場調査から戦略構築まで現場をサポートするマイクロシンクタンク 
  エリアマーケティング・商業開発・まちづくり 

   (sano@analog-corp.com
 
 
 
 
 
 
■複合ビルの商業ゾーンはもっと面白くなれるはず
 
「道頓堀極楽商店街」の閉店発表には、少し残念な思いがします。決して好みではないものの、そいれなりにしっかりと作り込まれた屋内型テーマパークで、大阪を訪れる外国人観光客を引きつける目玉施設として実績をあげていました。年間200万人の入場者数というのは海遊館の220万人に比べて決してすくなくはありません。(立地や入場料が違うので単純な比較はできませんが)
 
 部外者の目で勝手に推測すると、不動産の本体の「パチンコ事業」の経営が厳しいと言うことがあるのかなと思います。屋内型テーマパークは追加投資が必要ですからうまくいっている企業の方が少ないものです。本体の高収益体質があればこそ実現した施設であると見ていました。
 
 商業施設でも大型の複合ビルの場合、オフィスや、大型の非物販テナントで収益が上がってIいるから「商業」にそれほど厳しい収益が求められないという話をよく聞きます。新宿の東京ガスのビルに入っている「コンランショップ」は自社ビルであればこそ成立していた商業施設です。趣味が良く楽しい商品が集積されていますが、まず儲からない・・・。それでも機会があれば必ず訪れてみたい店でした。

 複合施設の商業ゾーンは、がつがつと売上をあげなくても大丈夫という好条件でありながら、中途半端な店が多くなっているように思います。「コンランショップ」のように思い切った新しい試みがあるわけでもなく、「なんとなく新しそうな店」=一応関西初とか日本初だけど・・・?が利便性対応の店とミックスされていて、端的にいって「ぬるい」商業施設が多すぎるように思えます。
 もっと面白い店、もっと時代を切り開く店が出来るはずです。また、売上にはもっとこだわらなければ・・・・真剣味のなさは、お客様にも敏感に伝わるように思います。不景気の中で大変でしょうが頑張って欲しいものです。(11月6日)
 
■就職氷河期の後でも増え続ける「就職しない若者」
 
 団塊ジュニアと呼ばれる戦後の第2次ベビーブーマーは、1970年から74年生まれの世代(現在34歳から38歳)を中心に1981年生まれまでの両親が団塊世代である年代を含めて論じられます。またいわゆる「就職氷河期」と呼ばれた時代は1993年から2004年までの時期を指します。ちょうど団塊ジュニア層が大学を出て社会に出る時期に重なっており、この世代の価値観やライフスタイルに大きな影響を与えているものと思われます。本人自身がそうでなくても周りの友人のおかれた状況はリアルに共感できます。
 
 2005年以降の就職者数の増加は、「景気回復」と団塊世代のリタイアによって「席が空いた」ことによるものです。下図をみておわかりのように、就職率は回復したと言っても67%、かつて8割以上が就職していた時代に比べて大きくダウンしています。
 
 数字を見て、あらためて驚くのは、ベビーブーマーが卒業しても毎年の卒業生の数は変わりらないことです。一旦ふくらんだ「大学」を整理統合しない限り「本来なら大学に進学しない」層の入学が増え、卒業後就職をしない若者の数は減少しません。働くことによって身につくスキルや見識、世間知を獲得できないまま年齢を重ねることになります。

 これらの若者を受け入れる企業も組織やキャリアパスを再構築していく必要があります。
                                         (10月24日)
図ー大学卒業者数と卒業後の就職者、就職率の推移(学校基本調査)

■中之島日和〜東西軸の未来
 
10月19日、京阪中之島線が開業しました。ようやく完成した東西の大動脈。スタートの利用状況はまずまず、いい感じだと思います。20日、平日の昼間に各駅間に乗ってみました。シニアのご夫婦や、カジュアルウェアに身を包みカメラを構えたシニア層の利用が目立ちます。沿線には美術館やホールが多く、公園も整備されています。また、中之島駅はロイヤルホテルに直結しています。西部地区では買い物施設や遊歩道、緑の整備がこれからですが、ゆっくりと街を楽しむための仕掛けはできそうです。
 
今までの大阪市内の繁華街、特にミナミから急速に大人が時間を過ごせる空間が無くなっています。仲良く歩いている老カップルをみていると、大阪の都心で一番美しい場所をつらぬく中之島線は新しい大阪の都市観光の名所となりそうです。(図参照)
           

 
かつて、89年に「なにわ考現学」という調査レポートをまとめた時にキタとミナミの2極をつなぐ「南北軸」に対比し、ヒガシとニシをつなぐ「東西軸」の重要性を提言しました。ヒガシは当時話題のOBPや京橋といった都心からさらに河内から奈良、京都につながる歴史伝統のあるゾーン。ニシはかつて国内外の産品や文化を集積して、都に届けた大阪港、そして関西国際空港など外に開かれた窓口としてのゾーンとして設定し街のポジショニングを提言しました
 
大阪の都市は歴史伝統を背中に背負いながら西へ西へと拡がってきた経緯があります。都市の重心も西へと移動してきています。大阪は、永きにわたる停滞をへて、ようやく今また次の時代へと動き出しました。(10月21日)
 
図ー「緑や水の都市アメニティの充実した街としてのイメージ評価」(%)


「なにわ考現学20052005年市内通勤者対象のアンケート  (N=586

「なにわ考現学941994年市内通勤者対象のアンケート (N=501)の比較

之島・淀屋橋」の評価があがっています。「OBP(大阪ビジネスパーク)」は当初の圧倒的な優位性は失われたものの、評価は高いといえます。「中之島西部地区」はこれからの整備が望まれます。
■関西市場への「参入障壁」は実在するかUpdate
 
かつて、「西武百貨店」が元気に多店舗展開していた頃、大阪市内への出店計画がことごとく「妨害」にあい中心部に出店できないの事を嘆いているという新聞報道がありました。西武は京阪神では郊外には出店していたものの都心部には出店できませんでした。

 後に西武とそごうが経営統合し、そごうが心斎橋に出店する際、ボディビルで鍛え上げたマッチョなトップと経営幹部の方々はかつて「妨害された?」と「関西人」に対する怨念と蔑みを隠そうともしなかったそうです。
 
 先日発表された島屋とH2Oリテイリングの経営統合のニュースは長期戦略としての機能補完が実現する、とても強力な組み合わせであると考えています。阪急百貨店本店は「中流層の店」という業界の評価にあるように、日常性からファッションまでバランスのとれた理想的な店舗です。(どういうわけか他のエリアに出店するとバランスが崩れることもありますが)ウィークポイントといえるのが伝統的なエスタブリッシュメントへのブランド力です。今回の島屋との提携でそれが解消されます。

 直近の効果としては2011年の「JR三越伊勢丹」のポジションどりが厳しくなります。もし私が出店担当者ならかなり厳しいプレッシャーを感じると思います。前述の企業のトップであれば「関西人」にいじめられている・・・・と思うのかも知れません。

 関西市場での「参入障壁」は過大な幻影であると私は思います。もともと、商売の街である大阪では全国各地、あるいは海外からの参入を受け入れるオープンマインドな風土があります。また、大阪以上に「排他的」なイメージのある京都の市場で「JR京都伊勢丹」は定着しています。

 心斎橋そごうが失敗しているのは、決して東京資本だからという外部的な理由からではありません。地域の市場についての理解と敬意が不足し、利益をあげる売場が不在であるからです。顧客に指示される売場をつくる限り、「参入障壁」などといったものは成立しません。

 縮小する市場の中で生き残るということは、競争相手を「淘汰」するということです。今後の百貨店の生き残りは、勝てるエリアに集中することと、百貨店の空白地帯になっている地方中核都市でも成立するビジネスモデルをつくることだと考えています。
(10月16日)
■新しいジャンルの「床用途開発」に次のビジネスチャンスがあるUpdate
 
今後、人口世帯数は確実に減少していきます。住宅、オフィス、そいて今後淘汰される商業施設の床を活用する用途を準備していく必要があります。「減築」という概念が注目されていますが、まだま現実的なイメージは一般に普及していません。「コンバージョン」という用途変更についてはかなり知られてきましたが、ひとつひとつ手作りのものとなります。

 特に都心部のオフィスビル、商業施設の空きスペースは景気動向によって大量に発生する事が想定されます。前回の不況を受けてカラオケボックスや漫画喫茶などが大量に登場し社会問題となっています。風俗店の案内所なども空き店舗のあとに入居しています。

 賃料負担力があっても資産価値を減少させる用途ではなく、共益費程度の賃料で資産価値を下げないもの・・・・料理教室、介護系の施設、リタイア層向けの起業オフィス、同好会的なクラブハウス、託児所、都市型農園・・・今から準備しておくとビジネスチャンスがありそうです。

 京都の丸善の店舗を購入したのは「ジャンボカラオケ広場」を展開している東愛産業です。同社は温泉旅館を購入し、食事付き7,800円で提供するビジネスでも成功しています。カラオケボックスも当初の安普請のものから一定のスペースを確保し、若者だけでなくリビングルームの外部化ともいうべきコミュニケーションスペースとしても活用されてきています。当初はディスカウンターとして出発して、アップグレードして都市機能にかかせないものになっていくパターンはかつてのダイエーやユニクロといった物販からサービス業にまで拡がってきています。

 リタイアしても完全に仕事から離れるのを嫌うシニア層が増えていますので、売上も賃料もそこそこでいいという割り切りでビジネスが成立する環境が揃ってきています。

 とりあえず、土日だけ開業するショップから始めていてはいかがでしょうか。早く不況が来ればいいのにと・・・不況が待ち遠しくありませんか?
                              (10月16日)
■細分化しすぎてもまた見えなくなる 関西という迷宮

 京都、大阪、神戸の3都市は互いに仲が悪くてお互いの悪口を言い合っているというのが定説になっています。また大阪の中でも北摂などの北の住民は南の街や住民とは違うキャラクターだと見ているといわれています。ふんふん確かにそんなところもあるかも・・・。
 大和川(大阪市と堺市、松原市等の境目に東西に流れる川)から南には「百貨店のMDはない」といいはなった人もいましたね。大阪南部でも堺市から見て、岸和田市、貝塚市の住民は「田舎の人」と見なしているようですし。大阪のディープサウスである泉佐野市でも海側の住民は「漁師」が多くて気質が粗っぽいとかいう話もあります。確かに地域の気質の違いは地域差別すれすれの面白い話題ではありますが、その「細分化ごっこ」に入り込むと際限ない迷宮に入ってしまいます。(京都でも北と南では「違う気質?」でしょうし、神戸でも東と西では「違う」とか〜かやくご飯の具をより分けて食べているようなトリビアですね)

 何年か前に東京の事業者の「大阪のOLは合理的(ケチ)だからこの価格帯の商品は無理かも知れないが、神戸か京都のOLをターゲットにしていけ成立するのではないか・・・・」という発言を聞いて思わずコーヒーを吹きこぼしました。(関西で一番吝嗇と見なされているのは間違いなく京都人ですから〜東京人は「地域差別ごっこ」でからかわれているのですよ。例えば、京都人がいかに「イケズ」かと脅かされているように・・・・)


 これは、テレビなどでの県民気質を面白くとりあげる番組の影響でしょうか?職場の昼休みの雑談ネタとして害がないでしょうが、ステレオタイプにあてはめて地域をわかったような気になるのは、プロが扱うエリアマーケティングではありません。

 不況になると「大阪」が注目されるようです。プロ野球も関西勢が頑張っていますしね。また、大阪についての変なイリュージョンが広まるんでしょうね。

 大阪の新今宮周辺の日雇い労働者向けの簡易宿舎に外国人旅行客が増えていることが話題になっています。新世界が近いしコテコテの大阪が「受けている」というわけではありません。バックパッカーにとってアジアの安宿に比べて、遙かに安全で清潔だから利用しているだけですから。

(10月10日)
■東京からは日本が見えないB「百貨店の本店力について」
 
東京の百貨店の本店は、どこの店もその店のブランドイメージを象徴する素晴らしいものです。例えば、伊勢丹新宿店の食品フロアなどはお菓子や野菜まで装飾的に陳列されていて、目の保養になります。三越日本橋本店の重厚さは伝統を体感させてくれます。多店舗展開している百貨店でも、3割から4割は本店の売上げだといわれています。

 それらの本店では、自分の店が想定している「お客様イメージ」に合わない人は排除しているようにも感じられます。環境、商品、お買い物をされている顧客が一体となってその店の個性を作っています。各社の社員もそのイメージに誇りを持っています。「本店の姿」が「本当の自社の姿である」と・・・。


 百貨店の統合が進んでいます。「スケールメリット」が長期的に縮小市場の中の百貨店経営を救うのだそうです。

 百貨店が地方や郊外に出店する時に例外なく陥るのが、本当は本店の姿が本物だけれど、このレベルの市場では少し落としたセカンドラインで揃えようとか、安物で売上をカバーしようと、してしまうことです。

 「センスがあって経済力のある人」がマーケットリーダーとすると、マーケットリーダーだけでなく「お金はあるけれどセンスに自信がない(隠れた富裕層)」と「センスはあるが経済力がない」この2つの層を確実につかむことが必要なのです。この層を店に招き入れるために、利益率の低い、リビング雑貨や食料品、レストランの役割が重要になります。生活全般の領域を提供することに「百貨店」の魅力があります。生活は「ファッション」と「呉服・宝石・美術」だけで成り立っているわけではありません。

 東京にいて、ショーケースのような本店から、利益率、交差比率などの数字だけで判断すると地域の店作りを間違えることになります。

  本店の持つブランドイメージ、言い換えると「あこがれのライフスタイルのイメージ」を活かしながら限定商圏で商売を成立させることができた百貨店がこれから生き残っていく事でしょう。「商売」の部分をテナントまかせにするとか、セール販売だけで数字をつくるとかしていると、肝心のマーケットリーダーに愛想をつかされて終わりというケースも少なくありません。

 例えば、一番お気に入りの服を着て、髪の毛もセットしたてで、メイクもばっちりの時の姿だけが「本当の自分」で、それ以外は「かりそめの姿」と思っているのでしょうか・・・もう若くないのに。開き直って身だしなみを忘れてしまうのもまた失敗パターンに陥ります。
(10月8日)
■縮小する市場に新規参入のチャンスがあるA「リプレース需要に活路を
 
世の中は本格的に不景気モードに入ってきました。景気後退という市場縮小にはどのような対策があるでしょうか。実質本位の安売り路線?

 
生活者の消費性向は抑制され、財布のひもは締まっていますが、この時期に伸びている商品もあります。「電動アシストバイク」、電気のモーターで駆動力を補助するタイプの自転車です。自転車というとディスカウントストアで数千円の商品で、使い捨てに消耗品というイメージが定着していましたが、今は数万円以上する電動アシストバイクが好調です。今まで自動車を使っていた配達業務や、買物時の移動に、自動車に置き換わって利用率が高まっています。原油高の余波といえます。規制が緩和され、駆動力が強まる今後、一層の活用範囲の広まりが予想されます。

 低迷を続ける海外ラグジュアリーブランドの中でも「アニヤ・ハインドマーチ」は相対的な割安感の割に高級ブランドとしての認知が高まってきており売上を伸ばしています。

 先日、銀座に開店したスウェーデンの「H&M」も安い価格帯のわりにデザイン性が高く(品質に疑問はあるものの)人気を集めています。

 経済的に厳しいがデザインセンスや快適さを犠牲にしたくないというニーズは厳然と存在します。ランクでいうと上位のカテゴリーの商品の代替となる魅力があれば今のカテゴリーではやや高めの価格でも「値頃感」を訴えることができます。

 前回の不況の時から「100円ショップ」や「ユニクロ」が伸びましたが、原材料費が高騰し、中国製品など外国産の商品への不信感が強まっている中では「低価格」のインパクト訴求ではなくワンランク上のカテゴリーでの「値頃感」に活路がありそうです。

 例えば「1,000円のランチ」は通常のサラリーマンには贅沢であっても、ちゃんとしたコース料理にするとか、ビュッフェレストランとすれば割安な感じがしますよね。(10月8日)
 
■大人の街「西梅田」の未来は?〜「ブリーゼブリーゼ」の開業Update
 
10月2日に梅田イーマがリニューアルオープン、翌3日にはサンケイビルの「ブリーゼブリーゼ」が開業し西梅田がにぎやかになってきました。
 
セレクトショップの集積に特徴のあるイーマは「“モノ”から“コト”へ」をキーワードにアイテム単体“モノ”の訴求ではなく、世界観。ライフスタイルを創造・提案する“コト”の訴求を意識したテナント誘致や内装演出により、“ここにしかない特別感”“独自性の強い世界観”の追求を目指しているそうです。
 地下2階の飲食フロアを物販に全面的に転換して年商100億円が目標。(ちなみに2007年度は91億円)人通りの多いディアモール大阪の通りに隣接していながらエアポケットのような落ち着いた空間で、好きな人には貴重な場所でしょう。


 シネコンのお客様と一部の飲食店がミスマッチですが,これから大型開発が続く梅田地区で独自の個性を保って、頑張って欲しいものです。(商業ゾーン店舗面積7,700u 地下2階〜6階)リニューアル後の3日は「ブリーゼブリーゼ」の賑わいとは対照的な落ち着き方でした。

 「ブリーゼブリーゼ」は「驚きこそ最高のおもてなし」がコンセプトでエリアの大人の雰囲気にあわせて上質なセレクト店を集積しOL+広域集客を目指しています。

 オフィスビル、ホールの複合ビル「ブリゼタワー」(地下3階、地上34階)の地下1階〜地上6階と33階が商業ゾーンで営業面積9,900u、年間売上げは100億円を目指します。

 同じセレクト系とはいえ、イーマの店舗に「モノセックス」な印象が強いのに対し、「女性中心」の雰囲気が感じられます。当施設はやや梅田の中心から離れていますが、堂島、中之島の通勤者の通勤導線にありターゲット層の吸引は可能だと思います。

 初日は入場規制がかかるほどの賑わいでしたが、いずれ落ち着くことでしょう。店の真ん中の空間に大きな吹き抜けをおいた商業施設で、あまり成功した事例がないのでこれからに注目です。

 西梅田周辺の専門店集積ではヒルトンプラザイースト・ウェスト(265億円)ハービス大阪(非公開100億円弱?)、ディアモール大阪(130億円)の中でターゲット層としてはディモール大阪への影響が大きいでしょう。
 
 梅田地区全体としては、2011年に大丸梅田店の増床(64,000u)、JR大阪三越伊勢丹(50,000u)、2012年に阪急百貨店増床(84,000u)、そして2012年に梅田北ヤードの街開きが待っています。

 大阪中央郵便局の建て替えの動向もあいまって、大人の街として定着してきた西梅田地区も今後の波乱が予想されます。大きな視点でのまちのグランドデザインが必要です。主導権をとる企業グループがどこなのか、今は視界が開けていません。(10月3日)
■景気後退期の不動産事業
              〜手間をかけることが強みになる
Update
 
不動産事業に大きな逆風が吹いています。特に新興の中堅デベロッパーの破綻が相次ぎ、材料費(建材等)の高騰の中、住宅の事業者が慎重になってきています。

 日本の人口は2005年をピークに減少局面に入り、2015年には世帯数も減少に転じます。現在、総住宅戸数は5400万戸で全国4700万世帯に対して14%も過剰になっています。もちろん、地域のミスマッチ、広さや質のミスマッチがありますので、住宅供給が不要であるというわけではありません。
 少子高齢化が進んでいる中で、今までの住宅購入のライフサイクルが狂ってきており、子育て世代での1次取得は大きく減少していきます。

 もともと、ベースになる市場のパイは縮小していくのは動かしがたい事実です。

 昨今のように景気が悪くなると「免震構造」を「耐震構造」にレベルを落とすとか、棟配置をフラット化して施工を単純化するなどの小手先のコストダウンに走りがちです

 景気低迷で一番打撃を受けているのはストックのない低所得層や、カットできない経費=教育費の負担にあえいでいる中間層です。住宅ほど高額な商品で多少、価格が下がったからといって購入意欲は回復しません。

 一方「富裕層」はどうでしょう。株価の下落で富裕層の消費が低迷し百貨店の売上げが落ちているといわれています。心理的な消費マインド消極的になり、フローの消費は縮小することは間違いないでしょう。ただ、「富裕層」には使える資金はあります。「東京に生息しているというヒルズ族」は別にしても地方の資産家や、「隠れた富裕層」、リタイアした団塊世代などローンを組まなくても住宅が購入できる層は確実に存在します。物件の立地によってターゲットは異なりますが、もし今住宅を供給するとしたらこの「富裕層」に向けた「資産価値」のある集合住宅でしょう。


 「資産価値」を維持するポイントは、「入居者を選別する」「供給者がメンテナンスに責任を持ち資産価値を維持する」の2点であると思います。手間をかけることを惜しまない、手離れを早くして資金の回転を重視するとおいう今までの発想の転換が必要です。不動産業界は、長期的な流れから見ても「事業の仕組み」を変えていく必要があります、景気後退の今はその好機なのかもしれません。

 商業デベロッパーについても同じようなことがいえます。ショッピングセンターを安く仕入れて高値で売り抜けるというビジネスモデルは投資資金が絞り込まれると破綻します。政府系ファンドなど長期の視点で運営される資金を呼び込むためにも、運営力、他社と差別化できる企画力のあるデベロッパーが生き残っていく・・・という原則に立ち返る必要があります。
(10月2日)
■駅立地の優位性はいつまで続くのか?

 鉄道の駅が商業立地として注目されたのはここ最近のことです。従来の運輸事業者は安全に、効率的に人の流れを作ることを第一に考えて、人が滞留してしまう商業施設の展開には熱心ではありませんでした。当時の駅ビルでは通勤のOLや学生向けの手頃な価格のファッションや書籍、軽食などの利便施設が中心でした

 鉄道利用者の絶対数の減少により、運輸事業の減収をおぎなう収益源として、商業を中心とした鉄道駅での不動産事業が注目されてくる中で、「駅チカ」や「駅ナカ」という新しい立地が発見され大きく成長しています。
 駅に近接した立地は多くの通行者の目に触れるため、単価が低くて回転の速い商品や、広告を兼ねたショールームのような店舗が多く、賃料の負担力も相対的に高いものになっています。

 昨年、地下鉄梅田駅に出店したユニクロの78平米の店舗で月坪20万円弱、ソフトバンクの54平米の店舗で月坪24万円強と公表されています。単純に比較できませんが銀座の一等地でも月坪25万円といわれていますから、これはかなり高い水準です。人通りの多い小規模なスペースですから特殊なケースかもしれませんが、このような相場につられるかのように一部の駅ビル、高架下でかなり強気な家賃設定をしている鉄道系のデベロッパーがあるようです。

 郊外SCの伸びがとまり、百貨店の長期低迷傾向が続く中。価格的にこなれた駅ビルの店舗に勢いがあり駅ビルが好調に見えるのかもしれません。 しかし、高い賃料を負担できる業種、テナントは限られています。

 このままでは、いずれ「簡単に利益があがる高額な商品」にシフトしてお客さんに愛想を尽かされた百貨店の後を追うような気がしてなりません。空洞化した地方の中心商店街では家賃だけが高止まりして高額な賃料を負担できる「現金商売」や「風俗」「パチンコ屋」だけが栄えています。

 すでに時間を楽しむ飲食店、雑貨店に関してはターミナルではなく都心の繁華街からはずれた立地の路面店に流れています。
 近い将来、どこかで考え方を転換する必要があると考えています。

                         (9月30日)
■東京からは日本が見えない@「鹿児島三越の閉鎖から考える」
 
大阪で商売を始めた飲食店が東京に進出すると、飛躍的に店舗数を伸ばし成長する事例が多い。市場のボリュームが桁違いに大きいからです。大阪でさえそうなのですから、地方都市と首都圏では「違う国」だといってもいいほど市場の規模に格差があります。デベロッパー、小売店も「収益率のいい首都圏に集中」という言葉をよく聞きます。東京な商売がしやすい環境なのかもしれません。実際、百貨店でも伊勢丹新宿店や三越本店などを見るとため息がでるほど綺麗で魅力のある店舗です。これを支えるお客様は東京でしかいないでしょう。

 百貨店、チェーンストアも東京、首都圏に本社機能を移転し「情報を得る」と称する企業が多いもですが、これは大きな間違いです。確かにアパレルの展示会は東京でしか開催されませんから、地方から少人数が出張すると東京で多くのスタッフが見に行くのでは効率が全く違うといいます。

 しかし、経営の意思決定をするトップが、商売のしやすい環境の「東京」でで考えると現場との感覚の乖離が大きくなり、意思決定を誤ります。「財界活動」をしたのいならそれでもいいでしょうが、小売業はあくまで地場産業なのです。全国展開する場合、全国に住むわけにはいきませんが、経営者は東京の感覚から少し距離をおくべきだと考えています。

 東京では考えられないほど「効率が悪く」「手間がかかり」、「うちの会社のお客様ではない」と見える人を相手にした商売も必要になるのです。

 閉鎖が発表された「鹿児島三越」は昔は「丸屋」という地域の百貨店でした。地方百貨店はチェーンストアによる買収から生き残った店も、最近の百貨店業界の再編流れの中で大手の「ブランド」に看板を掛け替えかえるみせが増えています。「三越」のブランドだから実現できるサービスと、デイリー性の強化を行えば、小さい面積であっても十分再生できたとも思います。

 「スイーツのフードテーマパーク」という「はやりモノ」に床面積をあてたことには大きな疑問が残ります。・・・・(実は稚内から台湾までの百貨店の仕事をしたと豪語していますが鹿児島は未踏の地ですのであまり大きな事はいえないのですが)東京の感覚で意思決定したのではないかと意地悪なことを考えます。
 いっぱいやれることがあったのに・・・・・。(9月26日)
■東京からは日本が見えないA「隠れた富裕層」
 
先日破綻した外資系の証券会社ではキャリアのお姉さんが年収数千万円を得ていたといいます。FXで数億儲けたという20歳過ぎのお姉さんやお兄さんが数十万円の靴や服をばんばん購入しているという話を聞きます。
 
 とりあえず、そういう話はおいといて・・・・。
 
地方都市での「富裕層」としては開業医、企業経営者といったあたりがスタンダードですが、もっと奥に分け入ると、見た目は垢抜けない農婦でありながら、数百万する着物を次から次に購入するような人達が存在します。
「垢抜けなくて」「センスが悪い」のですが「お金は使いたい気持ち」がまんまんな人達。
 
良い服、着物を購入しても着ていく場所がない、着て楽しむ場所がない。地方でもエスタブリッシュメントであれば地域の富裕層の集まりや、東京、大阪への都会に遊びに行く機会がありますから楽しむ場所があるのですが、「お金を使いたい」「楽しみたい」と思っていても実現する手段や機会をもたない人達がいます。
 
京都のお寺でのお茶会、ちゃんとしたホールでのカラオケ会、社交ダンス、ミニクルーズなど、「コト」を提供することでモノが売れます。そういったことをうまく利用しているのが呉服屋さん。

 目に見えているエスタブリッシュメントは百貨店の外商さんが捕まえていますが、「えーこの人が」というような隠れた富裕層の女性は逆にそのようなエスタブリッシュメントの場に入りにくいかもしれません。

 地方で商売すると言うことは、そのような人もお客さんにしなければいけない・・・と言うことは東京では見えません。冒頭に例を挙げた富裕層の方が簡単に、かっこよくお金を使ってくれそうにみえますものね。
(9月26日)
■次のメインプレーヤーは誰か?
 
勢いのあった新興デベロッパーの破綻が相次ぎ、商業開発、都市開発のプロジェクトについてもなかなか、前向きの話が聞こえてきません。生保などにもかつての勢いが無く、流通事業者も数が絞られてきた中で、今、市場で勢いがいいのはどの業界なのでしょう?

 現場での実感でいうと「商社系」のデベロッパーが積極的なのが目立ちます。大手商社およびその関連会社は開発意欲が衰えていません。一説にはエネルギー関連の事業が好調で、銀行などの資金調達にも困らない為ともいわれています。

 鉄道会社系統のデベロッパーはどうでしょう。昔から商業開発を行っていてノウハウを持っている企業と、そうでない企業で明暗が分かれているようです。沿線外の物件を購入したものの、売上が急減して大変な状況にある企業もあれば、表には出ないものの沿線外の物件のプロパティマネジメントを事業の柱にしている企業もあります。

 商社系のデベロッパーと良い立地とノウハウを持っている鉄道系の企業がここしばらくのメインプレーヤーであると思います。

 百貨店などの流通事業者はノウハウはお持ちなのですが、ノウハウを活かすためには力のあるプレーヤー(事業運営者)との間で考え方の意思疎通をはかる通訳が必要であると実感しています。

(9月24日)
 
 
■阪神なんば線で生まれる人の流れのミナミへの影響
 
2009年春に神戸市三宮と大阪市の近鉄難波駅(「大阪難波」改称予定)をつなぐ、阪神なんば線が開通します。阪神西大阪線の西九条から、九条、ドーム前、桜川、近鉄難波をつなぎます。近鉄難波を経由して三宮から奈良まで直通の快速急行が運行され、最短70分台、料金は940円で結ばれます。(現在の鉄道ではJR利用で1時間22分、1210円が最速です)

 三宮から近鉄難波まで約40分、400円。(現在は阪神と地下鉄をのりついで50分、540円)間の駅では西九条からUSJへつながり、最近好調なバファローズのホームグラウンドのあるドーム前にはイオンの商業開発が計画されています。

 開通後はどのような人の流れが生まれるでしょうか?定期券を持った通勤客が朝夕のラッシュ時に集中することは直ぐには期待できないでしょう。
観光、文化、スポーツでの人の動きは容易に想像できます。沿線には目的施設、観光資源が点在しているので、人の動きがとぎれることはないでしょう。

 ショッピングはどうでしょう。北摂、阪神間の住民の大阪市内での活動の南限は心斎橋までという説がありました。阪神間、神戸方面から来街しやすくなっても堀江、南船場から心斎橋に流れる若い人が中心になるでしょう。百貨店のお客さんであるシニア層は文楽劇場、新歌舞伎座、近鉄劇場など広域のミナミには回遊しても、なんば駅周辺(島屋)や心斎橋そごうには足が向かないと考えています。

 南海なんば駅周辺と近鉄難波駅の間の回遊導線が課題です。わずか数分の距離ですが徒歩回遊の障害になっています。来店いただくには強い目的性が必要です。南海電鉄による駅周辺の整備や島屋の大増床工事が進行中なのでその成果次第ですが、商店街、地元商業者も含めた面としての改善が必要になります。他所から来街した人にはミナミの地下街は迷路に思えるようです。地上の道も安全なルートがわかりにくいのでしょう。
心斎橋へは地下鉄で1駅なのですが、近鉄難波駅からからの御堂筋沿いや堀江〜新町の路面店のつながりからで徒歩での回遊も想定されます。そごうには足が向かないと考えるのは「そごう」自体の課題です。

 南海なんば駅の沿線、堺市ではシャープの液晶工場によって人の流れが増加しています。なんば駅から阪神電車経由で尼崎から山陽電鉄の姫路駅までつながるパネルベイのネットワークが描けます。定期的な人の流れは商売の基礎票です。

 南海なんば駅と近鉄難波駅をつなぐためのミッシングリンクをつなぐ事は、それぞれの鉄道事業者の旅客増にもつながります。

 安全で快適な回遊ルートの形成が阪神なんば線の成功とミナミ再生の鍵ともいえます。
(9月17日)
■自転車のあるライフスタイルの拡がりと文明の転換点
 
少し前まで、街での自転車のりは「ママチャリ」とよばれる使い捨ての実用車か、マニアののるロードレーサーなどのスポーツタイプがほとんでした。
環境や健康志向の高まりなどから自転車に対する関心が拡がってきています。理由のひとつには都心居住の増加もあり「自転車通勤」を実践する人が増えてきた事もあります。

 ファッション関係の記事が中心の繊研新聞でも自転車ライフ、自転車ファッションが定期的に取り上げられている。競技用のウェアはかなり派手な色目でピチピチなものだが、普段着感覚で着用できて機能性の高いものが多くなっています。

 自転車を熱く語るのは一部のマニアかおじさんが多かったのですが、若い人達の間にファッションとしても定着してきているのを見ていると、これは「文明」の地殻変動のあらわれではないかとも思えてきます。

エコロジーは頭ではわかっていても実際の行動は「楽」な方を選びがちです。「自動車」が売れなくなってきていることと自転車をおしゃれとして愛用することを選択する「価値観」が若い人に定着してきている背景をじっくりと考えてみる事で、小売業が若い層にどう「買ってもらうか」を解き明かすヒントがあるように思います。

(9月17日)
■まったりとした都市生活を楽しませるあべの「and」の開店

 9月9日、阿倍野HOOPの南に「都市生活素材館」をコンセプトに沿線生活者への都心型商業機能と、足元の都市生活者に対する「デイリーユース機能」の両面を持つ商業施設、「「and」が開店しました。

 営業面積は14,000u。核店舗のロフトが3,800u、近鉄文化サロンが3,600uを占めており、売上げ目標が70億円と発表されています。

 あべの再開発等で周辺の新住民も増えてきており、あべの・天王寺を回遊する来街者層もずいぶんと変化してきています。もともと梅田や心斎橋・なんばの百貨店に比べ、自転車での来店客が多いなど「生活」に近い立地の百貨店でした。現在都心の百貨店で子供服の売場が最も充実しているのも近鉄百貨店です。2014年に10万uの増床計画が発表されています。
 
 あべの再開発の進捗と共に街がどう変わっていくか楽しみです。

 食事後に訪問したので店の近くの有名店「山ちゃん」のたこ焼きを食べることができなかったのが、かえすがえすも残念です。
 あべの筋の「明治屋」にはとうとういけずじまいでした・・・・。地元のいい店も残っていて欲しいものです。(9月12日)

 明治屋はその後再開発ビルに入居しています。

■「縮小」する市場に新規参入のチャンスがある@
 
右肩あがりの成長期はスピードと規模が勝負になります。より早く、より大きい規模で展開する企業が勝ち残ります。大企業であることが有利な市場です。しかしながら、日本の市場は人口減少により確実に規模は縮小していきます。

 業績不振の企業経営者は必ず消費不振、競争の激化などによる市場縮小を理由としてあげています。様々な業界の事例から考えると「市場の縮小」は既存のマーケットリーダーにとっては大変な脅威ですが、新しく参入する企業にとっては大きなチャンスであるということを強く感じます。縮小する市場での新しいニーズは、既存のトップ企業にとっての「収益構造」では採算が悪くて対応しきれないところに生まれてきます。最初は「ニッチ」としてあらわれたものが「メジャー」になるのです。

 具体的に例を挙げると、例えば「ブライダル業界」です。かつては「結婚式場」そして「ホテル」での挙式・披露宴が主流でしたが、現在では「ハウスウェディング」「レストランウェディング」を選ぶカップルがとても多くなっています。
 街の中で増殖している「教会風」「邸宅風」の建物がハウスウェディングの舞台です。式を挙げるのは週末で1日1組か2組の貸し切り形式が中心です。1日数組以上を回転させることで成立していた従来の結婚式場、ホテルではとうてい採算があいません。週末だけ稼働することで運営コストを下げること、そして「ウェディングプランナー」によるアドバイスで、さまざまな部分で利益をあげることなど「収益構造」はまったく異なっています。それで収益を上げる企業によってサービスが提供されているのです。


 縮小市場でのプレーヤーの交代は今後「住宅市場」「小売業」等で確実に進むと考えています。「住宅市場」では1次取得者の世代が入れ替わり、ライフスタイル、消費意識が全く異なったユーザーが主流になります。現在の業界の常識では変化するニーズの中で収益をあげることは非常に困難です。

 「小売業」についても狩猟型のビジネスから新しいタイプの農耕型のビジネスへの転換が必要になってきています。 お客様のニーズに応えるためには既存の仕組みを解体して一から組み立てる勇気が必要になります
(9月9日)

エリアマーケティングでは地域のマーケットリーダーをつかむ

 あるサイトで、ロフトの前の社長安森氏の「つくば西武」時代のエピソードが語られていました。筑波は研究施設の周辺は旧来の集落で構成されている田舎です。西武百貨店が出店し、地域にカード加入者の営業に回っている時、大きな家を回ってもなかなか会員が集まらなかったそうです。

その時に、ある人に「本家」を回りなさいといわれました。「本家」を見分ける目印は大きな木がある家。本家がカードを持てば回りの家も同じようにカード会員となり、みるみるカード会員が普及したということです。

 外から見てわからないネットワーク、外から見てわからないマーケットリーダーを知るには、より地域のコミュニティに入り込む必要があります。

 ファッション感覚と言ったより個人的なライフスタイルのリーダー層を知るには、意識調査を行いライフスタイル分析をすることがが効果的です。かつて商業施設の改装・出店のために全国数十カ所でライフスタイル分析を行ったことがありますが、地域地域でファッションリーダーのありようは異なっていました。東京の感覚だけでは間違えてしまいます。あの伊勢丹でさえ小倉からは撤退しました。

 東京と筑波などの地域の違いほどでははないにしても例えば、大阪でも京阪沿線と阪急沿線の生活者の意識行動、商店主のの意識行動はかなり違います。地域情報誌なども気がつけばずいぶんと細分化されています。
 
 あまり細かな分類に入り込むと全体像がぼやけてしますが、小売業はあくまでも地域産業です。エリアの中で自店のベースになるお客様と同時に、エリア独自のマーケットリーダー層のニーズをつかんで、自店の顧客としていくかがポイントとなります。

  (9月9日)
■空港内の商業施設「ソラナカ」が示す小売業の今後の可能性
 
業界紙「繊研新聞」が年に一度まとめている「専門店集合商業施設調査」が8月11日付の紙面で紹介されています。全国のショッピングセンターの動向がわかる貴重な資料です。今年トップに踊りでたのは「成田国際空港ターミナルビル」で、営業面積が25,351uであるにも関わらず、売上高は854億5,600万をあげています。今年2位の「ラゾーナ川崎プラザ」が63,800u、638億円。3位の「「玉川高島屋ショッピングセンター」で、46,100u、593億円と比べて、驚くべき売場効率です。同施設の店舗数は278店。物販133店。飲食94店。総合免税店22店。ブランドブティック29店。主に免税店が売上をリードしているようですが、今年の夏に開店した「三愛水着楽園」は空港関連の従業員の声に基づいて設置されたイベントショップです。
 
航空需要の伸び悩んでいる「空港経営」の今後の可能性を指し示すものでしょう。出国手続き後のエリアなので実際に店舗をみていないので何ともいえませんが、「ソラナカ」空港内ならでは特別な需要対応が他にない魅力であれば空港利用者だけでなく広域からの目的客を集めるポイントになるでしょう。これは「空港立地」に限らない法則です。
 
空港関係者は「空港内の滞留時間を増やすことは、鉄道等との競争の中での優位性を損なう」と消極的な見方も強いようです。今まで、空港内の商業施設が低迷していたこともあるでしょうが、このスタンスは少し前までの駅立地の商業施設の位置づけにも似ているところがあります。      

                               (2008年9月5日)
「百貨店病」は不治の病なのか?
 
 9月1日の日経流通新聞で「丸井」の不振が「百貨店病」として紹介されていました。
 
 「百貨店病」。20年以上前から構造不況、斜陽産業と自嘲してきた百貨店業界では、周期的に同じ間違いを繰り返しています。最近またしても「若者層の百貨店離れ」「高価格化から価格の裾値を広げる」という話題が新聞などで報じられています。

 30年以上前に当時の三越銀座店に百貨店として初めて「ヤング売場」が導入されて大きな話題になりましたその成功をうけて、当時勢いのあった西武百貨店が若者向けの売場を改装の際に導入。「百貨店リニューアル」ブームが全国の百貨店に広まりました。

 その後、少し景気が良くなると商品の価格帯があがり、そしてお客さんの年齢層もあがりました。結果として利用者が減少、再度、若者対応、価格対応への揺り戻しがあります。「バブル」「富裕層ブーム」のついこの間も同じ事を繰り返しています。限られた売場面積の中で市場環境や競合環境にあわせて「意図的に変化」しているのならともかく、そのたびに同じ事をゼロから積みあげていく事で百貨店の体力を損なっています。

 時代環境に引きずられるのではなく、先に読んで時代をリードしていくことが「病」を癒す最善の処方でしょう。業界の方はファッショントレンドを先読みすることはお好きなのですが・・・。
                               (2008年9月5日)
毎日が「縁日」いつまで続く「神戸南京町」の「賑わい」
 
 震災前の神戸南京町を知るものにとっては、現在の「南京町」の姿はよく似ているけど違う匂いのする。パラレルワールドのように感じられるでしょう。
 
 豚まんや餃子、北京ダックから(何故か)神戸ビーフ、スイーツの屋台がかつての店の前に立ち並び、さながら毎日が縁日と言った状態です。
来街者の減少に悩む地方の商店街からすれば「夢」のような賑わいですが、
 もともとの店の前にずらっと屋台が並び、本国から出稼ぎに来ているとおぼしき売り子さんが化学調味料の味が濃い冷凍食品の点心を販売している光景は、毎日続く縁日を思わせます。(もちろん古くから営業を続けている地元の中国人の店もいくつか残ってはいます)もう、あの震災から10年以上たっています。この縁日的な賑わいはいつまで続くのでしょう。そしてそれが終わった後の街はどうなっていくのでしょうか。

 普段、どうやって「集客」しようかばかりを考えているのですが、その先を考えることも同じくらい重要なことだとあらためて感じました。

                                (2008年9月5日)
■ミナミから始まる関西の国際化
 
 心斎橋筋商店街周辺を集中的に観察する機会がありました。以前にもまして中国、台湾、韓国などからの観光客の姿が目立ってきています。国内のスーパーブランドの路面店もアジアの観光客の利用がなければなりたたないとも言われています。客単価の桁が違うようです。

 大阪府の調査では外国人観光客の訪問先として、大阪城に次いで、心斎橋、なんばなどが 上位にランクされている。アジアの観光客の施設利用ではUSJ、海遊館をさしおいて「道頓堀極楽商店街」が上位にランクインしている事実は海外への観光客誘致PRのありかたなども含めてとても興味深いものがあります。

 大阪市内でも、ジャニーズショップ、サンリオギャラリー、ポケモンセンターなどの施設は海外の若者にも人気があります。インターネットを通じてサブカルチャーは世界で共有されています。私たちの日常の楽しみが「国際的」に共有されていることから「国際化」戦略を考え直していく必要がありそうです。
                                        (2008年8月25日)


■大阪湾岸「パネルベイ」のセカンドインパクト
 
堺市へのシャープの液晶コンビナートへの投資に加えて、姫路市へにパナソニックの液晶工場の投資、尼崎市へのプラズマパネルの投資など大阪湾周辺でのパネル関連の工場新設の動きが今年に入って急速に注目を浴びています。
 悪名高い「工場三法」の規制緩和、撤廃が背景にあります。経済効果についていくつかの予測がされています。確かに、自動車産業に比べて雇用創出効果は低いのかもしれませんが、関西への人の流入の増加は間違いありません。

 住宅建設、人の流れの変化など都市を変える副次的な影響に注目しています。

    (CRI2008年4月号寄稿)(2008年8月25日)
■「軽井沢」のまちで「富裕層」のライフスタイルを考える
 
 軽井沢はセレブの避暑地としてのイメージが強い。実際軽井沢駅からそう遠くない敷地に、敷地規模が広くゆったりと「たてられた別荘地が拡がっており、別荘地とはなばかりの山の中の建て売り住宅地のような他の「別荘地」とは違った格式を感じさせます。実際樹木が茂っており、街の中でもその界隈だけ気温が低いようです。
 
 ただし、「軽井沢銀座」と言われる駅前の通りは少し時代遅れのチープな繁華街となっています。それはそれでありがちなパターンです。街の中で目を引くのは「骨董屋」が多いことです。日常使いの西洋骨董のような商品が多い。路面店でもホテル内のショップでも。

 空間の価値を高める土地の贅沢な使い方と、これみよがしな「ブランドショップ」ではなく、骨董を選択する価値観には「富裕層」のライフスタイルについて考えさせられるヒントがありました。
 
 どこにでもあるものではなく、そこにしかないもの。それをどのように演出するかというのは街の魅力作りの課題でもあります。「富裕層」=お金を持っている人というだけでは市場の魅力はあまりありませんが、「富裕層」=ライフスタイルの洗練を極めた人であるなら、その価値観はより幅広い層へのマーケティングに活かせるものがあるでしょう。
(2008年8月25日)
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